はじめに
先日、ある製造業の部長さんから相談を受けました。
「高木さん、うちの若手が言うことを聞かないんです。何度説明しても『なぜそうするのか』を納得しないと動かない。昔の新人は言われたことをまずやってみるものだったのに・・・」
こういった嘆きは、私がコーチングを導入している多くの企業で聞かれます。
Z世代(1990年代後半〜2010年代前半生まれ)の部下とのコミュニケーションに頭を抱える上司は少なくありません。
「何を考えているかわからない」 「仕事に対する熱意が感じられない」 「すぐに答えを求めてくる」
こうした言葉の裏には、実は私たち上の世代の「思い込み」や「コミュニケーションの型の古さ」が隠れているのかもしれません。
Z世代が選んだ上司のNGフレーズ
あなたは部下に対して、こんな言葉をかけていませんか?
「どれだけ自分の頭で考えたの?」
「何が言いたいのか全然わからない!」
「なんでそんなに時間がかかるの?」
これらは、実際にZ世代の若手社員を対象とした調査で「上司から言われて萎縮した言葉」ワースト10に入っているフレーズです。
言われた側はどう感じるでしょうか?「自分は否定されている」「尊重されていない」という感情が生まれるのは当然です。
私自身30年間、国内外でマネジメントをしてきた経験から言えることがあります。
人は世代に関係なく、「認められたい」「尊重されたい」という欲求を持っています。ただ、その欲求を満たす「カタ(型)」が世代によって異なるのです。
引用・参考:2023年トヨタ流DXを支える心理的安全性と仕事のスピードアップを実現する2つのカタ
「Z世代が選んだ上司のNGフレーズワード」より
思い込みを捨て、「カタ」を更新する
「若い世代は〇〇だ」という固定観念は、実はコミュニケーションの障壁になります。
以前の会社で、私が最初に取り組んだのは「コミュニケーションのカタ」の更新でした。
指示や命令ではなく、「問い」と「承認」を中心にした対話です。
この「カタ」は世代を超えて効果がありますが、特にZ世代には強く響きます。
なぜなら彼らは幼少期からインターネットで情報に自由にアクセスでき、多様な価値観に触れてきた世代だからです。
一方的な指示よりも「なぜそうするのか」の理由と、自分の貢献が認められることに価値を見出します。
NGフレーズをGOODフレーズに変える4つのポイント
では具体的に、どのように言葉を変えればよいのでしょうか?私が実践している「たった3つの手順」をお伝えします。
ポイント1:モチベーションが上がるように伝える
まず行動したことを認め、感謝を伝えます。人間は認められることで次の行動への意欲が湧きます。これは40年前も今も変わりません。
ポイント2:指導内容を納得できるように伝える
なぜその質問をしているのか、指導の意図と本人にとってのメリットを伝えます。「意味」がわかれば行動が変わります。
ポイント3:具体的な行動をイメージできるように伝える
抽象的な問いかけではなく、何をどう考えて行動すればよいかを具体的に示します。「仕事の進めカタ」というフレームワークを提供することで、考える道筋が見えてきます。
ポイント4:やり直しを減らせるように伝える
後出しジャンケンのような指導は誰も喜びません。最初に考えるべき項目をまとめて伝え、自分で考える機会を与えます。
実践!たった3つの伝え方の手順
これらのポイントを踏まえ、実際の「ものの言いカタ」はこの3ステップです
Step1 まずできている部分を褒め、感謝を伝える
Step2「本人のメリット」を伝える
Step3「考える視点や手順」を伝える
例えば、
このデータ集めてくれてありがとう(Step1)
この経験は次の企画でも活きてくるよ(Step2)
ここに顧客の声の分析も加えると、もっと説得力が増すと思うんだ(Step3)
このアプローチを導入していけば、若手社員のモチベーションが向上し、自発的な行動が増えいくでしょう。重要なのは、この「カタ」が若手だけでなく、すべての世代に効果があるということです。
世代間ギャップは「カタ」で埋められる
私たちは往々にして「昔はこうだった」という思い出フィルターを通して現代を見がちです。しかし、コミュニケーションの本質は変わっていません。変わったのは「カタ」なのです。
あなたが明日から職場で試せる一つのアクションがあります。それは、NGフレーズを言いそうになったとき、一呼吸おいて「3ステップの伝え方」に変換することです。最初は意識して行う必要がありますが、次第に自然と身についていきます。
Z世代との間に感じる溝は、実は思ったほど深くありません。「認め、意味を伝え、具体的な道筋を示す」という普遍的な「カタ」で、私たちは世代を超えたコミュニケーションを取り戻せるのです。
あなたの職場では、明日からどんな「ものの言いカタ」を試してみますか?
引用・参考:2023年トヨタ流DXを支える心理的安全性と仕事のスピードアップを実現する2つのカタ
株式会社コーチ&メンタージャパン 代表取締役 髙木明宏
ICF(国際コーチング連盟)認定パートナー法人
(一財)生涯学習開発財団 認定マスターコーチ