成果が出るフィードバックの基本 〜事前準備が9割〜

はじめに
先日、保険会社の新任所長さんとコーチングセッションをしていた時のことです。
「部下へのフィードバックができなくて困っているんです。特に問題のある部下に対して何をどう伝えていいか分からない。かといって放置すれば状況は悪化する一方で、、、」
その所長さんの悩みはとても切実でした。よくよく話を聞いてみると、彼は「マネージャーが陥る部下育成のデフレスパイラル」というまさに負の循環に巻き込まれていました。
部下を育てる時間がない → できる部下もできない部下も辞めていく(できる部下は多忙化、できない部下はやる気喪失) → 自分が業務をやるしかない(プレーヤー化) → さらに部下を育てる時間がない
このループから抜け出せず、所長自身も疲弊していました。
フィードバックとは何か
フィードバックとは、簡単に言えば「相手の行動や成果に対して情報を返すこと」です。良い行動を強化したり、改善が必要な点を伝えたりするコミュニケーションです。効果的なフィードバックは、部下の成長を促し、組織のパフォーマンスを高める重要な手段となります。
しかし現実には、多くのマネージャーがフィードバックを避けがちになっています。
その背景には3つの大きな要因があります。
- 人材の多様化 – 昨今、価値観や働き方の異なる多様な人材が増え、マネージャーはさまざまなタイプの部下に相対す必要が出てきました。
- パワハラへの懸念 – パワハラ防止法の施行などもあり、「厳しいことを言ったらパワハラと言われるのでは」という不安から、必要なフィードバックを避けてしまうケースが増えています。
- 時間の不足 – マネージャー自身が多忙を極め、丁寧な指導や育成に時間を割けないという現実があります。
長年のビジネス経験から私が確信しているのは、「フィードバックがなければ成長はない」ということです。
どんな組織でも、適切なフィードバックがあってこそ人は成長し、チームは進化します。特に複雑な環境下では、双方向のコミュニケーションが何よりも重要な鍵となります。
フィードバックの鍵は事前準備にあり
効果的なフィードバックの基本的な手順は5つのステップから成りますが、今日はその中でも最も重要でありながら見落とされがちな「ステップ0」について掘り下げたいと思います。
【ステップ0】事前準備 – SBI情報の収集
フィードバックを行う前に必要なのが「事前準備」です。的外れなフィードバックをすれば、部下はまともに話を聞いてくれません。把握すべきは「SBI情報」です。
- S = シチュエーション:どのような状況で、どんな時に
- B = ビヘイビア:部下のどんな振る舞い、行動が
- I = インパクト:どんな影響をもたらしたのか、何が良かった/悪かったのか
例えば、「新商品プロジェクトを担当してもらったけど(S)、手配スケジュール管理にミスが発生し(B)、3ヶ月も新商品の完成が遅れてしまったようだね(I)」といった具体的な情報を集めておくことで、部下のどの行動が問題なのかを明確にできます。
SBI情報収集の重要性
フィードバックの成功は、この「ステップ0」のSBI情報収集にかかっていると言っても過言ではありません。これが不十分だと、その後のフィードバックが的外れになり、せっかくの機会が無駄になってしまうのです。
S(シチュエーション)の具体化
「いつも」「毎回」といった曖昧な表現ではなく、「先週の営業会議で」「先月のプロジェクト期間中に」など、具体的な場面を特定することが重要です。これにより、部下も「あの場面のことか」と理解しやすくなります。
B(ビヘイビア)の客観性
「態度が悪い」「やる気がない」といった主観的な評価ではなく、「会議中に3回スマホを見ていた」「納期の2日前になって初めて資料作成に着手した」など、目に見える行動として伝えることで、部下も反論しにくくなります。
I(インパクト)の明確化
「迷惑だった」といった感情ではなく、「その結果、クライアントから信頼を失った」「チーム全体の作業が1週間遅れることになった」など、その行動がもたらした具体的な影響を伝えることで、なぜ問題なのかを理解してもらいやすくなります。
先ほどの所長さんは、この「SBI情報収集」に特に時間をかけました。
普段なら「あいつはいつも報告が遅い」と思っていたところを、「先月の新製品開発において(S)、
中間報告を3回連続で1日遅れで提出した(B)ことで、最終的に製品リリースが1週間遅れた(I)」と具体化。
この準備があったからこそ、部下とのフィードバック面談でも感情的にならず、具体的な改善点を共有できたのです。
フィードバックの壁を乗り越える第一歩は、この「SBI情報収集」から始まります。丁寧な準備が、その後の対話の質を大きく変えるのです。ぜひ明日から、あなたの部下とのコミュニケーションに取り入れてみてください。小さな変化から、大きな組織変革は始まります。
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株式会社コーチ&メンタージャパン 代表取締役 髙木明宏