vol.51 コンセプチュアル思考で組織に革新を生む 〜AppleやGoogleのような発想を育てる視点〜

なぜ画期的なアイデアが生まれないのか?
経営者の皆様とお話しすると、よく出てくるのが「うちにもAppleやGoogleのような革新的なアイデアを生み出す人材を育てられないだろうか」「なぜそういう発想が出ないのか」という声です。技術力も人材も揃っているはずなのに、なぜ画期的なアイデアや斬新な解決策が生まれないのでしょうか。
その答えは、多くの組織で「コンセプチュアル思考」が育まれていないことにあります。今回は、この思考法を組織に根付かせることで、どのように革新的な人材を育成できるのかについてお話しします。
なぜコンセプチュアル思考が重要なのか
現代のビジネス環境では、単に与えられたタスクをこなすだけでは競争力を維持できません。市場の変化が激しく、顧客のニーズも多様化する中で、求められるのは「物事の本質を見抜き、新たな価値を創造できる人材」です。
そもそもコンセプチュアル思考とは何か?
コンセプチュアル思考とは、簡単に言うと「物事の本質や意味を深く考える思考法」です。従来の思考が「何を(What)」「どのように(How)」に重点を置くのに対し、コンセプチュアル思考は「なぜ(Why)」「何のために(What for)」を大切にします。
例えば、従来の思考では
- 「売上を10%向上させる」(目標)
- 「新商品を開発し、営業を強化する」(方法)
コンセプチュアル思考では
- 「なぜ売上向上が必要なのか?顧客により良い価値を提供するため」(意味)
- 「真に求められている価値とは何か?」(本質)
- 「私たちの存在意義は何か?」(目的)
この思考法には4つの特徴があります
①根源を見つける:表面的な問題ではなく、根本的な原因や本質を探る
②全体を見る:部分的な視点ではなく、全体を俯瞰して捉える
③抽象と具体を往復する:高い視点と現実的な行動を行き来する
④主観を大切にする:データだけでなく、直感や感性も重視する
そして、
抽象化(様々な情報を整理)→概念化(本質を言葉にする)→具体化(行動に移す)
というプロセスを通じて、革新的なアイデアが生まれるのです。
しかし、多くの組織では日々の業務に追われ、表面的な問題解決に終始してしまいがちです。これでは、根本的な課題の発見や、斬新なアプローチの創出は困難です。目標に「意味(〜のために)」を加えることで真の目的を見出し、革新的な解決策を生み出す力—それがコンセプチュアル思考なのです。
コンセプチュアル思考を組織に根付かせる4つの実践法
1. 本質を問う対話の時間を設ける
根源を見つける思考を育むために、定期的に「本質対話セッション」を設けましょう。表面的な課題ではなく、「私たちが本当に解決すべき問題は何か」「この取り組みの根本的な価値は何か」を深く掘り下げる時間を作ることが重要です。
例えば、「売上を上げたい」という課題に対して、「売上向上の背景にある真の目的は何か」「顧客にとって本当に必要な価値とは何か」まで議論することで、本質的な解決策が見えてきます。
2. 部分ではなく全体を見る視点を養う
分析的思考も重要ですが、コンセプチュアル思考では総合的・包括的な視点が不可欠です。定期的に「俯瞰の時間」を設け、自社の事業や部門の活動を業界全体、社会全体の中で位置づけて考える機会を作りましょう。
週に一度、チーム全体で「私たちの仕事は社会にどんな価値を提供しているのか」を議論する時間を持つことをお勧めします。
3. 抽象化と具体化の往復運動を実践する
コンセプチュアル思考のプロセスは、①抽象化(雑多な経験や出来事を見つめる)②概念化(言葉で定義し、絵図で描く)③具体化(行動・実践に展開する)の3段階です。
プロジェクト会議では、まず様々な情報や経験を整理し(抽象化)、それらから共通する本質を見出して言語化し(概念化)、最後に具体的なアクションプランに落とし込む(具体化)という流れを意識的に取り入れてください。
4. 主観を大切にする環境を整える
客観的な分析だけでなく、研ぎ澄まされた主観を重視する文化を作ることが重要です。「データに基づかない意見は価値がない」という考え方を改め、直感や感性から生まれるアイデアも積極的に評価しましょう。
ブレインストーミングの際は、「正解を求めない時間」を設け、自由な発想を奨励することが大切です。
コンセプチュアル思考導入のメリット
これらの実践により、組織には以下のような変化が生まれます:
創造性の向上:表面的な問題解決から脱却し、根本的で斬新なアプローチが生まれるようになります。
モチベーションの向上:仕事の意味や価値を理解することで、社員のエンゲージメントが大幅に向上します。
競争力の強化:他社では思いつかないような独創的なソリューションを生み出せるようになります。
組織文化の変革:指示待ちの文化から、自ら考え行動する主体的な文化へと変化します。
実際に、弊社でコーチングを導入された製造業のお客様では、チームリーダーがコンセプチュアル思考を身につけることで、自動車用部品の研磨方法について手作業仕上げの自動化率70%を達成し、日当たり80分の時間短縮を実現されました。
今日から始められる第一歩
コンセプチュアル思考は一朝一夕で身につくものではありませんが、今日からでも始められることがあります。まずは、次の会議で「この取り組みの本当の目的は何か?」「私たちはなぜこれをやるのか?」という質問を投げかけてみてください。
そして、出てきた答えに対して、さらに「なぜ?」を繰り返してみましょう。最初は戸惑われるかもしれませんが、徐々にチーム全体の思考の質が変わっていくはずです。
真の競争力は、技術や資金ではなく、「物事の本質を見抜き、新たな価値を創造する思考力」にあります。コンセプチュアル思考を組織に根付かせることで、あなたの会社にも「AppleやGoogleのような発想」を生み出す人材が育っていくでしょう。
株式会社コーチ&メンタージャパン 髙木明宏
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