vol.53 リーダーシップとフォロワーシップの新常識 〜ワーストから学ぶアプローチ〜

はじめに
私はこれまで自動車関連の製造業で働き、国内外でマネジメントを経験してきました。中国、タイ、韓国、ベトナムと、様々な文化的背景を持つメンバーたちと向き合う中で、いつも考えさせられることがありました。
「理想のリーダーとは、一体どのような人なのだろうか?」
世の中には、この疑問に答えようとする書籍が数多く存在します。書店に行けば、「○○力」というタイトルの本が山積みになっています。「実行力」「決断力」「コミュニケーション力」「共感力」、、、確かにどれも大切な要素です。しかし、これらを体系的に身につけようとすると、あまりにも多くのスキルが必要で、完璧を目指すうちに迷子になってしまう経験はありませんか?
特に、個人の価値観が多様化している現代では、一つの理想像を描こうとすると、どうしても矛盾や偏見が生まれがちです。私自身、海外での工場運営時に、日本で「良い」とされていたリーダーシップが全く通用しない場面に何度も遭遇しました。
「理想のリーダーシップ像」とは
リーダーシップのヒントは「上司のワーストランキング」
そんな時、興味深いデータに出会いました。日経プラスワンが30歳〜59歳の会社員男女1,030人を対象に実施した「働きにくい、愛想を尽きた上司や先輩」に関するアンケート結果です。
1位:言うことや指示がコロコロ変わる
2位:強いものには弱く、弱いものに強い
3位:大事な局面で責任逃れ
4位:感情的で気分屋
5位:失敗を部下のせいにする
このランキングを見た時、皆さんはどう感じましたか?
理想を描くよりも、「最悪なリーダー像」を明確にする方が、はるかに多くの人が共感できる共通項を見出せるのです。
一貫性こそがリーダーシップの根幹
このデータを逆説的に読み解くと、理想のリーダーの条件が見えてきます。
それは「ブレない」「言動に一貫性を保っている」ということです。
私が海外工場の立て直しに挑んだ時のことを思い出します。当初、現地の従業員150名は私の指示に対して懐疑的でした。なぜなら、それまでの上司たちは朝令暮改を繰り返し、責任を現場に押し付けることが多かったからです。
私が最初に取り組んだのは、自分の方針を明確にし、それを一貫して貫くことでした。
「この工場を必ず黒字にする」「そのために全員で協力する」「失敗は私が責任を取る」
この3つの約束を、どんなに困難な状況でも曲げませんでした。
フォロワーシップを育てる
フォロワーシップにも同じことが言える
興味深いことに、フォロワーシップについても同様のことが言えます。同じ日経プラスワンの調査で「困らせたり、腹が立った人」の特徴として以下が挙げられています。
1位:挨拶がきちんとできない人
2位:メモを取らず、同じことを何度も聞く
3位:敬語が使えない
4位:雑用を率先してやろうとしない
5位:ホウレンソウ(報告・連絡・相談)ができない
これらの行動は、一見すると単なるマナーや技術的な問題に見えるかもしれません。
しかし、私はここにも「一貫性の欠如」という共通点を見出します。
挨拶ができない、メモを取らない、ホウレンソウができない.
これらはすべて「責任ある行動を一貫して取れない」ことの表れなのです。
出典:日経プラスワン「働きにくい、愛想を尽きた上司や先輩」アンケート調査(30歳〜59歳会社員男女1,030人対象)
多面的な視点で「理由」を探る
ただし、ここで重要なのは、問題のあるフォロワーを単純に批判するのではなく、「なぜそうなってしまうのか」を多面的に考えることです。
国内、海外での経験を例に挙げると、最初は「なぜ彼らは時間を守らないのか」「なぜ報告をしないのか」と苛立ちを感じることもありました。しかし、彼らの文化的背景、教育環境、これまでの職場経験を理解するうちに、その行動には必ず理由があることが分かってきました。
ある若い作業員は、以前の上司から「余計なことは言うな」と叱られ続けた結果、報告することに恐怖を感じるようになっていました。別の従業員は、家庭の事情で夜遅くまで副業をしており、朝の集中力が続かない状況でした。
真のリーダーシップとは
こうした経験を通じて、私は真のリーダーシップとは以下の2つの要素から成り立っていると確信するようになりました。
1. 揺るがない一貫性
自分の価値観と方針を明確にし、どんな状況でもそれを貫く強さを持つこと。これにより、メンバーは安心してフォローすることができます。
2. 多面的な視点
問題や課題に直面した時、表面的な現象だけでなく、その背景にある様々な要因を理解しようとする姿勢。これにより、真の解決策を見出すことができます。
メンバーたちは私の一貫した姿勢に信頼を寄せ、同時に一人ひとりの事情を理解してもらえることで、主体的にフォロワーシップを発揮してくれるようになったのです。
あなたのリーダーシップを見つめ直してみませんか?
現在、私はコーチングを通じて多くの経営者や管理職の方々と向き合っています。その中で感じるのは、多くの方が「理想のリーダー像」を追い求めるあまり、自分自身を見失ってしまっているということです。
あなたは、自分の価値観や方針を明確に持っていますか?そして、それを一貫して貫いていますか?メンバーの行動に問題を感じた時、その背景にある「理由」を多面的に考えているでしょうか?
完璧なリーダーになる必要はありません。大切なのは、あなたらしい一貫性を持ち、常に学び続ける姿勢です。そして、目の前のメンバー一人ひとりを理解しようとする温かい眼差しです。
リーダーシップとフォロワーシップは、互いに影響し合う関係です。あなたが一貫性と多面的な視点を持つことで、組織に変化の兆しが見え始めるかもしれません。メンバーとの関係性も、少しずつ変わっていく可能性があります。
もし、あなたが今のリーダーシップに悩みを感じているなら、一度立ち止まって、自分自身と向き合ってみませんか?コーチングは、そんなあなたの気づきと成長を支援する対話の手法です。一人で答えを見つけるのが難しいとき、適切な問いかけが新たな視点を開いてくれることがあります。
ぜひ一度、コーチングセッションを体験してみてください。あなた自身の中にある答えを見つけるお手伝いをさせていただければと思います。
株式会社コーチ&メンタージャパン 髙木明宏
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