vol.84「やる気」を「実現」に変える3つのステップ

「やります!」の後に起きること
あなたの周りに、こんな方はいませんか?
「わかりました、やります!」「絶対に頑張ります!」と力強く言ってくれたのに、翌週の1on1で進捗を確認すると…
「いや、先週はちょっと忙しくて。今週こそやります」と、また同じ言葉が返ってくる。
私はコーチとして、何百回もこのやりとりを見てきました。
現場でマネジメントをしてきた経験の中でも、何度もこの場面に立ち会いました。
これは「やる気がない」のではありません。本人は本当にやろうと思っているのです。問題は、「やる気」と「行動」の間に、決定的に欠けているものがあるからです。
「やる気」は行動の燃料。エンジンをかけるのは「いつ」という決断
少し考えてみてください。
「時間ができたらやろう」
この一言がどれだけ多くの大切なことを先送りにしてきたか。
時間は「できる」ものではなく、「つくる」ものです。
忙しいマネージャーや経営者の手帳は、もともと空白などほとんどありません。
コーチングの世界では「GROWモデル」という枠組みをよく使います。
Goal(目標)→ Reality(現状)→ Options(選択肢)→ Will(意志・行動計画)という流れです。
そして最後の「Will」こそが、最も重要でありながら、最も見落とされがちなステップなのです。
「目標達成の意志はありますか?」という問いに、多くの人は「あります!」と答えます。しかし、「では、いつ、どのタイミングでやりますか?」と聞くと、急に言葉に詰まる。そこには明確な「時間」がないのです。
行動を生む問いかけ
私がコーチングセッションでよく使う質問があります。
「それをいつやりますか? 具体的に教えてください。」
「来週中に」と答えてくれた方には、さらに聞きます。「来週中というと、何曜日の何時ごろですか?」——これを繰り返すうちに、「火曜日の16時から17時、商談が終わった後すぐにやります」という答えが出てきます。
これが劇的に行動を変えます。
「重要だが緊急でないこと」に踏み出す3つのステップ
もう一つ、私が大切にしている考え方があります。それが「重要度と緊急度のマトリクス」
スティーブン・コヴィー博士が『7つの習慣』で広めた、あのフレームワークです。

多くのマネージャーや経営者は、毎日「緊急で重要なこと」に追われています。顧客からのクレーム対応、急な会議、トラブル処理これらは確かに重要です。しかし、本当に組織を変え、人を育て、将来を切り開くのは「重要だが緊急でないこと」なのです。
部下の育成、チームのビジョン共有、自分自身のスキルアップ、健康管理、これらは今日やらなくても誰も困りません。だから先送りになる。しかし1年後、3年後を振り返ったとき、最も後悔するのはこの領域を疎かにしたことではないでしょうか。
だからこそ、私はクライアントの方々に次の3ステップをお伝えしています。
① タスクを「重要度」と「緊急度」で4つに分ける
② 「重要だが緊急でないこと」を先にスケジュール表へ書き込む
③ 飛び込みの仕事が入ったときは、別な時間を確保(リスケ)する
この順番が大事です。緊急なことを先にスケジュールに入れてしまうと、重要なことが永遠に後回しになります。重要なことこそ、先に「予約」してしまうのです。
「リスケ」を制度にしたチームの変化
以前、コーチングでご一緒したある製造業の課長Aさんのお話をさせてください(ご本人の了解を得て紹介しています)。
Aさんは「部下の育成に時間をかけたい」という明確な目標をお持ちでした。
ところが毎週の1on1で「どうでしたか?」と聞くと、「今週も忙しくて、、」という答えが続いていました。
そこで私はAさんに聞きました。
「育成の時間を、今週のスケジュール帳に入れてみてください。何曜日の何時ですか?」
Aさんはしばらく考えて「毎週水曜日の朝8時半から9時を、部下の田中さんとの対話時間にします」と決めました。
さらに「もし急な会議が入ったら、翌木曜日の同じ時間に振り替えます」というルールも自分で決めたのです。
3ヶ月後、Aさんからこんな言葉をいただきました。「田中が変わりました。自分から提案を持ってくるようになって。
そして私自身も、以前より落ち着いて仕事ができています」
やる気は最初からあったのです。必要だったのは、「いつやるか」という決断と、それを守る仕組みだけでした。
あなたのスケジュールに、大切なことは入っていますか?
少し立ち止まって、考えてみてください。
今週のあなたのスケジュール帳に、「重要だが緊急でないこと」はどれくらい入っていますか?
もし空白だとすれば、それは「重要でないから」ではなく、「まだ予約していないから」かもしれません。
やる気はある。でも、行動が変わらない。
その壁を越えるのに必要なのは、強い意志でも特別な能力でもありません。「明日の14時にやる」という、たった一行のカレンダー書き込みです。
コーチングとは、その「一行」を引き出す対話です。100を超えるスキルを体系化したコミュニケーション技術を通して、あなたの中にある「やりたい」を「やった」に変えていく。それが私の仕事です。
まずは今日、一つだけ試してみませんか?「いつやるか」をカレンダーに入れる、それだけでいいのです。
株式会社コーチ&メンタージャパン
代表 髙木明宏
【出典・参考】
- Gollwitzer, P. M. (1999). Implementation intentions: Strong effects of simple plans. American Psychologist, 54(7), 493–503.
- スティーブン・R・コヴィー『7つの習慣』(キングベアー出版)
- John Whitmore『Coaching for Performance』(GROWモデルの原典)
- ICF(国際コーチング連盟)コーチング定義および倫理規定

